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核融合発電で使う中性子のはなし

核融合発電では、炉の中で中性子が使われることをお話しましたが、この中性子を正しく怖がってほしいと思っています。1999年9月30日のJCOでの「臨界事故」で、2名の方が亡くなりました。その直接の原因が中性子の被曝でした。中性子は使い方を誤ると、悲惨な事故につながることを痛感しました。

核融合発電では、炉の中以外で中性子を発生することはありません。また運転中は建物への入室が禁止されます。暴走することは原理的になく、瞬時に中性子発生を止めることができます。だからJCOのような「臨界事故」は起こりません。(当然チェルノブイリのような事故も起こりません)

中性子はエネルギーを取り出すために、炉の壁で止める必要があります。ですから、ほとんどが炉の壁で止まってしまい、炉の外には飛び出してこないわけです。ただし、100%が炉の壁で止まるわけではありません。

☆炉が入る建物は、中性子が外に飛び出ないように分厚いコンクリートの壁でできています。それでも少しだけ通り抜けるものがあります。その量(他の放射線も含めて)は原子力発電所では敷地の境界で年間50マイクロシーベルトという目標値が設定されています。(マイクロシーベルトは放射線防護の目的で使われる放射線の量の単位)核融合発電所でも完成すれば、この基準を使うでしょう。さて50マイクロシーベルトが大きいのか小さいのかが気になってきます。中性子は宇宙から常に降っています。高度が高いほど中性子が多く、アメリカやヨーロッパまでのフライト片道で50マイクロシーベルトの中性子を受けます。(外部リンク:放射線医学総合研究所のホームページ)定期検診で受けている胸のレントゲン写真はX線という別の放射線ですが、だいたい100マイクロシーベルトです。敷地境界に年中ずっといて、50マイクロシーベルトという基準は、過度に怖がる量ではないと思います。

コメント

和田悦子 さんのコメント…
中性子は分厚いコンクリート(2Mですね?)でさえぎられるということですが、すでに、実験棟の建設から16年くらいの年月が経っているいるわけです。多少なりの劣化もみられるでしょうし、実験するたびに、劣化していくことを念頭にいれておられるのでしょうか?(まずは机上の計算しかできないでしょうけど)
それに、50マイクロシーベルト(原発敷地境界と同じです)は怖がる量ではないというのは研究所側の言い分です。レントゲンでもリスクはあります。(敷地境界に年中ずっといても問題ないとは言いすぎではないですか?)原発周辺の住民に健康の被害が出ている現状はお調べになりましたか?
どれだけ、論争しても安全だ、危険だの差は縮まらないと思います。要は安全対策を何重にもしなければいけないような実験はしてほしくない。命を次世代に安全につなぎたい女性のひとりとして、物申します。国の施策とはいえ、太陽はひとつでいいです。
匿名 さんのコメント…
あなた考えすぎ。
匿名 さんのコメント…
命を次世代に安全につなぎたい女性の一人として言わせて下さい。安全でクリーンな核融合発電を次世代の為に早く実現させて下さい。
匿名 さんのコメント…
あなたみたいな勉強不足で感情的で過激な発言をする人を核アレルギーと言います。
高畑一也 さんの投稿…
管理人です。皆さまのコメントありがとうございます。
賛否両論、いろいろなコメントを投稿していただいて大変嬉しいのですが、なるべく穏やかにお願いしますね。
匿名 さんのコメント…
高畑さま、
核融合は未来のエネルギー資源として期待しております。ぜひがんばって研究を進めてください。
高畑一也 さんの投稿…
どうもありがとうございます。研究がんばります!
核融合を考える友の会 さんの投稿…
核融合がもし実現出来なければ近未来に人類は間違いなく滅亡へと向かうでしょう。とあるテレビ番組でやってましたが今のように大量の化石燃料を使ってる現状は人類滅亡のカウントダウンを一日の24時間の時間に例えるとまもなく夜の22時に差し掛かるそうです。自分達大人の世代はいいですが、次の世代を背負う子供達、そして今から生まれて来る子孫達の為、脱化石燃料の為、チェルノブイリ・福島を繰り返さない(脱原発)為、安全で環境に優しい核融合発電を一日も早く実現出来るよう頑張って下さい。心より応援してます。
高畑一也 さんの投稿…
どうもありがとうございます。一日も早い実現を目指して、研究に励みます。

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1億度ってどんな温度?

核融合発電では1億度の水素のプラズマを使いますと見学者に説明すると、びっくりされます。1億度という温度が容易にイメージできないからです。そしてそのことを怖がる人もいます。だからプラズマを温度で表現するのは慎重にしないといけないようです。
☆気体は目に見えませんが、小さな粒子(分子)がある速度で動き回っています。上の絵のように、色々な方向に飛び回っています。私たちの周りの空気(窒素分子と酸素分子がほとんど)だと秒速300メートルほどです。でも空気の粒子が当たって痛いと思う人はいませんよね。(これって不思議です)

☆さて、気体の温度が高くなると、粒子の速度も速くなっていきます。プラズマになって、イオンと電子に分離しても、粒子の速度は温度が高くなるにつれて速くなっていきます。(イオンと電子の速度が同じとは限りません。)例えば「蛍光灯」は身近なプラズマの代表ですが、中の粒子(電子)は、1万度の温度になったときと同じ速度(毎秒600キロメートル)で走っています。『蛍光灯が1万度?』またまた話しがややこしくなってきました。蛍光灯を触っても、火傷するほど熱くはないですよね。

☆私たちが熱いとか冷たいとか感じるのは、温度だけでなく、(温度)×(粒子の数)が関係しているのです。(熱の伝わりやすさも関係しますが・・)蛍光灯の中に1万度の電子がいても、その数がものすごく少なければ、熱くなりません。実際にものすごく少ないのですが。

☆さて、核融合発電のプラズマは、粒子(原子核)の数(密度)が空気の10万分の1くらいしかありません。(真空と言ってもよい状態なのです)1億度の温度とかけ算すると、熱いことは間違いないですが、想像を超える熱さではありません。ちなみに、大型ヘリカル装置でできた最もエネルギーの高い(熱い)プラズマは、200リットルのお風呂のお湯の温度を2度上げるくらいのエネルギーしかもっていません。だから1億度といっても、周りのものを溶かしてしまうような力は持っていないのです。(安心してください)
☆だったら、どうしてエネルギー源になるの?という質問が来そうです。核融合発電所のプラズマで核融合反応が起こったときにできる中性子、これがある速度を持っていて、プラズマから外に飛び出してきます。その中性子をブランケットと呼ばれる壁で吸収して熱に変えるので、エネルギーが取り出せるのです…

核融合と核分裂のエネルギー比較

核融合も核分裂原子核の質量欠損を使ったエネルギーなので、少量の燃料で大きなエネルギーを得ることができます。工学的に大きな意味はないのですが、核融合と核分裂のエネルギーを比較してみましょう。

1個のウラン(U)原子核が核分裂したときに発生するエネルギーは、約200MeV(メガ電子ボルト)です。(MeVは物理で使うエネルギーの単位です。大きさを比較するだけなので、ここでは詳しい説明は省略します)一方、1個の重水素(2H)原子核と1個の三重水素(3H)原子核が核融合したときに発生するエネルギーは、約17MeVです。そうです、1回の反応で発生するエネルギーは、核分裂の方が核融合より約10倍大きいことが分かります。

ところが、こんな比較もできるのです。同じ燃料の重さから発生するエネルギーの比較です。ウランは水素よりかなり重たいので、燃料の単位重さ当たりで発生するエネルギーは、逆に核融合の方が核分裂より4倍大きくなります。

もっと分かりやすく表現すると、核分裂の燃料ウラン1グラムは「石炭3トン分」のエネルギーに相当します。一方、核融合の燃料(水素)1グラムは「石炭13トン分」に相当します。さらに、これは「石油約8トン分」です。いずれにしても、少ない燃料で大きなエネルギーが得られることにかわりありません。

※ここでは反応で生まれるエネルギーを計算しました。発電所で電気エネルギーに変換すると、発電効率がかけ算されるので、少し数字が変わります。

核融合と核分裂の違い

★原子力発電所の事故以来、『核分裂』と言うべきところを『核融合』と言い間違えている発言をよく耳にするので、ここはしっかりと訂正しておきたいと思います。(こんな時期なので黙っておこうと思ったのですが、わたしにも少しは主張する権利があると思い・・)

★原子力発電所で起こる反応は『核分裂(カクブンレツ)』です。ウランのような重たい原子核が分裂して2つに割れることを『核分裂』といいます。(上側の絵)原子力発電所で『核融合』が起こることはありえません。(原子力発電所で起きた水素爆発は、水素と酸素の化学反応で、核融合ではありません)ついでに高速増殖炉(もんじゅ)も『核分裂』です。

☆『核融合(カクユウゴウ)』は、水素のような軽い原子核が二つくっついて、一つになることです。(下側の絵)今、世界中で研究が行なわれている『核融合』発電は、水素をくっつけて(融合して)、ヘリウムにする制御された核融合反応を使います。その時、『核分裂』を使うことはありません。

☆だから、次のことは自明です。『核融合』発電ではウランを使いません。だから、爆発もしないし、暴走もしないし、連鎖反応もしないし、再臨界もしないし、メルトダウンもしないし、核燃料もないし、核物質もないし、核不拡散問題もないし、高レベル放射性廃棄物もありません。
【水素爆弾との違いは私の別の記事を参照ください】

☆初期(まだ実現まで25~30年くらいかかるけど)の『核融合』発電も、トリチウム(三重水素)という放射性物質(半減期が12年)を扱うため、100%クリーンとはいえません。しかし、放射能漏れによる潜在的リスク(発電所が保有する放射性物質の強さの合計)は原子力発電の1000分の1以下です。だから最悪の事故を考えても、周辺住民が避難するような事態にはなりません。

核融合発電のしくみ

☆下の絵は、核融合発電の仕組みを簡単に書いたものです。核融合発電の中心は「核融合炉」です。(火力発電では「ボイラー」、原子力発電では「原子炉」と呼びます)炉の中で燃焼しているのは、水素の仲間(重水素三重水素)を真空状態に近い希薄なガスにし、1億度まで加熱したものです。これを『プラズマ』と呼びます。中では核融合反応が起きていて、反応で発生したエネルギーを熱として取り出して水を沸騰させます。そして蒸気でタービンを回し発電します。蒸気はもう一度海水で冷やして水に戻します。ここまでの話では、燃えているものが違うだけで、火力発電、原子力発電とおおまかな仕組みは同じです。(次世代の核融合発電では効率の高い直接発電も考えられています)


☆火力発電や原子力発電では燃焼している燃料から直接熱が発生し、熱を取り出すことができます。ところが核融合炉ではまず、核融合反応でできた高速で飛び出してくる中性子を周りを覆った厚さ1mのブランケットと呼ばれる部分で受け止めます。ブランケットで受け止められた中性子は速度を落とし、その落ちた速度に相当するエネルギーが熱に変わります。(プランケットの温度は500度ぐらい)この中性子の運動エネルギーが熱エネルギーに変わるところが従来の発電と異なる点です。

☆材料(主に金属)に中性子が当たると、機能が劣化したり、放射化(普通の材料が放射能を持つように変化)したりします。中性子が当たっても丈夫な材料、さらに放射化しにくい材料の研究が現在精力的に行われています。そして最初の核融合炉に使うことができる材料の候補もすでに見つかっています。当然のことですが、生体遮蔽(作業者や周辺の住民に中性子を含む放射線が当たらないようにすること)が絶対に必要ですが、その技術はすでに開発されています。

☆プラズマが周囲の壁に触れてしまうと、プラズマの温度が下がって、核融合反応が止まってしまいます。そのために『磁場のかご』を使ってプラズマを空中に浮遊させます。(このとき壁とプラズマは離れていて、その間は真空になっています)この『磁場のかご』を作り出すのが、ブランケットの外側にある超伝導マグネットです。超伝導マグネットはマイナス269度という極低温に冷やされます。1億度という超高温とマイナス269度という極低温が数メートルほどの距離で接近していることも工学的に難しい技術です。しかし、…

重水素燃料を海水から取り出すためのエネルギー

核融合発電燃料重水素(水素の同位体)ガスです。海水中に無尽蔵に存在するため、枯渇する心配がありません。ところが、水素の中の重水素の存在比率は0.015%しかありません。「重水素を抽出するために、莫大なエネルギーを使わないのですか?」と質問をされることがあります。その質問にお答えしたいと思います。

☆上の絵は、水の中の分子の様子を表したものです。ほとんどの水分子では、水素(青い玉)2個と酸素(黄色い玉)1個がくっついている状態が、ほんの一部だけは重水素(赤い玉)と酸素がくっついています。この重水素と酸素が結合した水のことを「重水」と呼びます。また普通の水素でできた水を「軽水」と呼びます。(「重水」と「重水素」は違うものですのでご注意ください。また実際には水素1個と重水素1個と酸素1個が結合した水分子があるのですが、話しを簡単にするためにここでは省略します。)
☆「軽水」と「重水」を分離する技術は、すでに工業化されています。新しい方法としては、電気分解を使う方法があります。電気分解(電気で水素と酸素に分解すること)すると、「重水」より「軽水」の方が早く分解します。だから部分的な電気分解を繰り返すと「重水」だけが濃縮されて残っていくというしくみです。 ☆「重水」ができれば、後はこれを、完全に電気分解すれば「重水素」ガスと酸素ガスに分解できます。重水素はこうのようにして生産されます。
☆さて問題は、重水素の生産に必要なエネルギーです。生産過程では「重水」生産がほとんどのエネルギーを使います。論文で調べると、1kgの重水を生産するのに必要なエネルギーは57MWh(メガワット時)ということでした。一方、1kgの重水には200gの重水素が含まれてます。この重水素を使って核融合反応を起こすと38,000MWhのエネルギーが発生します。これは重水生産に必要なエネルギー(57MWh)の約700倍になります。つまり、燃料生産に必要なエネルギーは、発電されるエネルギーに対して十分に小さいという結果になります。
(参考:R. Dutton他、Nuclear Engineering and Design 144 (1993) 269)